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クララとお日さま《五感で感じる読書》

Lbioの北川です
突然ですが...
みなさんは「マイ読書スタイル」お持ちですか?

珈琲を傍らにリラックスしながら
窓際で風に揺れるカーテンをぼんやり眺めながら
お気に入りのBGMを聴きながら
図書館の静けさの中で

心地よく本が読める時間は至福ですね😇

私は自然の中に身を置くことが大好きで
よく屋外で本を読んでいます

風の柔らかさや臭いを感じながら
みどりの香りを感じながら
五感で自然を感じながらの「緑陰読書」🌱



すっかり寒くなってきてしまいましたが
今回は、川の流れを足下に感じ
緑に囲まれて読んだ夏の想い出と共に
カズオ・イシグロさんの『クララとお日さま』をご紹介させてもらいます

カズオ・イシグロさんと私との出会いは
1989年に英語圏最高の文学賞とされるブッカー賞
2017年にノーベル文学賞を受賞した
長編小説『日の名残り』でした🌅

第2次世界大戦後
失われつつある伝統的な英国が舞台
イギリスで屋敷に勤める老執事の回想の旅物語
品格ある執事の道を追求し続けてきた
(と本人は固く信じている)
せつなく、はかない
時代に翻弄されながら
少し不器用で愛嬌のある執事スティーブンスの生き様に哀愁を感じながら
私も共に旅した大好きな一冊です

対して、今回ご紹介する『クララとお日さま』は格差社会の近未来が舞台
主人公のクララは、ショートカットの髪に浅黒い肌のフランス人風の可愛らしい姿を持つ人工知能を搭載したAF(人工親友)
クララがジョジーという一人の病弱な少女とめぐり会うところから物語は始まります

この本で私を惹き付けたのは
クララの「繊細で無垢な特質と心の機微を読み取る観察力」です
観察と学習を繰り返し
優しさとユーモア、そしてある一定の客観性(危うい感じがかわいらしい)を伴った
彼女なりの世界観を作り上げていく認知の過程が
少し不器用で、真摯で、とても愛おしいものでした

「人工知能」や「遺伝子編集」「野蛮な能力主義社会」
分断された世界が「当たり前」になりその中で暮らしている未来の人々
社会のシステムに丸ごと飲まれその中で感情が置き去りにされていく
そしてそのことに無自覚になっていく
誰とどんな関係性の時の自分が本当の自分なのかすらわからない
そんな状況の中で
洞察力と共感力に優れたAI、クララが見る世界は
不穏な空気感をはらみながらも
無垢でどこまでも優しさに包まれている
ふっと立ち上る人間らしい感情の交流
心の柔らかい部分を感じる瞬間

しかし、すべては長くは続かず
立ち上っては消えていく

でも確実に
その瞬間は、心に宿る
そして
自分の中で
相手との関係性の中で
息づいていく

ますます流れの速くなるこの世界を生きる私たち
現代の延長線上にある未来
わたしたちの選択の連続が
未来の世界につながっていく
そんなことを感ぜずにはいられませんでした

大切な人とお日さまの日だまりの中
柔らかい心で笑い合うその瞬間が
私たちの希望なのかもしれないと

物語の終わり...クララの長きにわたるAF人生の終わり
ここは賛否両論、多くの読者が心揺さぶられることでしょう
私もその一人
読後感は
一抹のすがすがしさのようなものを感じたり
人の身勝手さを感じ、ざわざわした感覚があったり
なんとも複雑でした

数日たってこんな思いが浮かんできました
生きとし生けるもの、この世の中に存在するすべてのものに与えられた役割
他者からどう見えようが
その役割を全うしたと思える人生を生きる
共に過ごした時間の想い出
共に考え変化したその過程
そうして作り上げられた関係性

すべてのものは有機体であり
この世に降り立ち役目を終えて無に帰す
木々が種から成長し
大きな枝をつけ
森で他の生き物の寝床になり、食物となり
生命を繋ぎ、循環させる
そんな役目を終えて
古木になり、枯れて、土に帰り
生命の命の源として地球の一部になる

読者が穏やかではいられないストーリー終盤の
「クララが役目を終える場所」
木々達とは場所が大きく違いますが
クララもそんな感覚なのかと思ったりもしました
その役割を終えて大きなものの一部になる
クララの場合は関わったすべての人達との関係に宿ることで
彼らがこれから創り出していくすべてのものの一部になっていく

そもそもが、、、
私たち人間は自分の視点から見た善し悪しに過ぎない概念にひっぱられすぎなのかもしれない
「役目を終える場所」がクララからどう見えていたのか
満ち足りた目で見るその「場」は
私たちが見ているのとは違って見えるのかもしれない
「役目を終える場」がどこであるかのこだわりすらないのかもしれない

外側ではなく内側からの満ち足りた幸せ
外側から解釈するものではなく
本人が内側から感じるもの

ノスタルジックな空気感を感じながら
お日さまの当たる場所でぜひ手に取ってみて下さい

とても好きな本なので
ついつい長くなってしまいました

今日も最後までお付き合い頂きありがとうございました✨

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