キービジュアル

Topics

トピックス

戯曲を読む《虚構と現実のはざま》

Lbioの常澤です。

サピエンス全史を少しずつ読み進めているうちに、いつの間にか脱線……
無性に読み返したくなった一冊に、心奪われていました😫

たった三人の役者で上演でき、第三舞台の公演以降多くの劇団で上演が繰り返されてきた鴻上尚史の名作戯曲「トランス」です。



「私は他人である」
もう一人の自分が残したメモにはそう記されていた。
そんな妄想をきっかけに、同級生3人が再開したところから語られる物語。



精神科医、フリーライター、おかま。

それぞれが孤独を受け入れようともがき、お互いを救おうとすることで救われていく。


物語を通して映し出されるのは、何かを信じたくて、信じるものを求めては追い込み、まつりあげていく人の普遍的な姿。

そこに人生というものの真実があるようで、

サピエンス全史で論じられていた

「虚構を信じる力」によってホモサピエンスは生き延びた

という視点と、重なりあっていったのかもしれません。

人間は物語を創作し、その中の一定の役割を担うことに自分の生の意味を見出す。


言葉にするのは難しいですが、

自分の弱さと向き合わされたようでもあり、唯一の希望を見せられたようでもありました。




あなたのそばに私がいること

私のそばにあなたがいること

すべてはそこから始まるのです。


私の愛する人は

精神を病んでいます。

ですが、私は、

とても

幸福です。









孤独の中で愛を求め、虚構の関係の中で繰り広げられていくテンポのいい会話、
ハッと胸を突かれるようなセリフの一つ一つに目が離せなくなります。


あなたはどんな物語を生きていますか?

家族という物語

会社という物語

世間という物語……



虚構と現実、妄想と真実。

そんなものの狭間で、たった一つ信じることのできる真実があれば、

そのもののために生きてみようと、なんだかそう思わせてくれるのです。


つい、ひとり余韻に浸りすぎてしまいましたが、きっとこの作品を手に取った多くの人が、

心の中に抱え込んでいたわだかまりのようなものが、静かに溶かされていくのを感じることでしょう。

時代が変化しても色あせることなく、胸に響く名作戯曲。

今だからこそ、より深く響いてくるように感じます。

一覧へ戻る